品質管理課が推進する、新規品立ち上げのオンライン対応とデータ活用への取り組み

シバサキ製作所では、自動車部品を中心に、高精度な金属切削加工品を製造しています。高い安全性が求められる自動車の部品の製造には、厳しい品質管理が欠かせません。

新規製品立ち上げにおける品質計画のとりまとめ、量産品質の管理、維持をおこなうのが品質管理課です。品質管理課は、単に製品の精度や品質のチェックをおこなうだけでなく、製造部と連携し、より良い製品を製造するための取り組みを実施しています。

今、品質管理課に求められること

シバサキ製作所では、ISOの品質システムやより高度な顧客要求システムを運用し、要求品質に応じて適切な検査工程を実施しています。製造ラインにおける全数検査機による加工精度確認や、顕微鏡を使った目視による全数外観検査の他、抜き取りによる細かな寸法、形状の検査などをおこなってきました。検査でエラーとなったものは、エラーの内容が記録されるとともに、製造部に戻されて適切な処置が実施されます。高精度、高品質の維持のためには、検査部門と製造部門の連携は欠かせません。「高品質を維持する」ことを第一に、日々情報を共有しながら製造、検査を続けています。

オンライン会議ややり取りでお客様の負担を減らす

 オンラインによるお客様とのコミュニケーションでは、いかに情報をわかりやすく伝えるかが重要です。新規製品の加工ライン立ち上げ時には、工程計画の作成などにおいて、お客様、製造、品質管理の三者間で綿密な打ち合わせが重ねられます。その内容は多岐にわたり、情報量も多いです。

 従来は対面での打ち合わせが大半であり、製品の現物や数字を見ながら、時間をかけて詳細まで話すことができました。しかし、現在求められるオンライン会議などを活用した場合、現物を手に取って詳細まで見ることは出来ず、画面を通して見せてもよく伝わりません。資料においても、画面上で共有はできますが、ただ数字が並んでいるようなものでは、内容をうまく伝えることが難しくなります。

品質管理課では、オンラインでの対応がスムーズに進むように、動画や顕微鏡画像撮影技術などを活用しよりわかりやすく資料を作り、お客様の負荷を減らせるように心掛けています。

「説明の資料をいかにわかりや作るかを意識しています。現物を見せ合いながらできないので、精度がどのようになっているとか、一目見てわかるようにしなければいけません。そして、資料はなるべく早く作成し、事前に見て頂けるようにして、オンライン上での会話で完結できるような形にします。」と、品質管理課の担当社員は話します。

オンラインに限らず、お客様とのコミュニケーションでは、疑問や質問に対して、なるべく早く、正確に、十分な量の情報を提供できることが望まれます。事前の準備はもちろん、今までの経験や積み重ねた知識により、1の質問に対して、倍以上の回答が出せることが品質管理課の強みの1つです。

データ活用と情報共有を目指したデータベースの導入

オンラインでの対応とともに、品質管理課で力を入れているのが、他部署との情報共有とデータ活用です。品質管理課では、工程計画の資料や検査結果など、多くの情報が蓄積されています。以前は、これらのデータは、ローカルなPC内か紙ベースで保存、管理されていました。そのため、検索性が悪く、過去の事例から原因を特定しようとしても、希望する情報にたどり着くまで時間がかかりました。また、製造部から送られてくる情報については、改めて情報を入力するか、ファイルを移し替える必要があるので、複数の作業が発生します。製造部側で情報を探すにも、3つある製造部の他の部の情報には直接アクセスできないので、一度品質管理課を通さなければなりません。

このような状況を解決するため、品質管理課では、課内の社員主導で構築したデータベースの活用を推進しています。これにより、データの検索性が上がり、以前より活用しやすくなりました。

品質管理課の担当者はデータベース活用についてこのように話します。

「異常連絡につきましては、データベースで全て残すようになっています。何月何日にこういう異常が出て、その原因はこれだったというようなデータが積み上げられていて、後から簡単に追いかけられるようになりました。現在はまだ品質管理課内での運用ですが、問題が発生したら各部がデータベースに入力して情報共有していく方向で、さらに構築を進めています。」

今後は品質管理課と製造部との間で情報共有やデータ活用がさらに進み、連携が強化されていきます。

製造部との連携で、より良い製品を提供する

品質管理課は、製造に直接的にかかわる部門ではありません。しかし、高精度、高品質を維持するためには欠かすことのできない部署です。製造部で全数検査機を使って精度の確認をおこなっていますが、その結果が本当に正しいものなのか、2重、3重にチェックすることは、「お客様に不良品を流さない」ことを確実にするためにも必要なことです。

「製造部から来たものが、本当に正しいのかどうかを判断するところは、やはり品質管理課の仕事です。シバサキ製作所では、お客様から図面を受け取り、要求事項を満たすように加工をおこなっています。手間と時間をかければ出来上がるものは良くはなります。しかし、それではコストがかかってしまう。この要求を満たすには、ここはこうした方がいいとか、この加工でおこなうのではどうかなど、品質管理課からも意見を出して、製造部と連携しながらより良い製品を提供していきます。」

ミクロン単位の精度を求められ、時として人の命にもかかわる高精度、高品質の部品を安定的に製造するには、製造技術だけでなく、しっかりとした検査体制も重要です。品質管理課は、品質保証を確実なものとし、より良い製品を製造するための取り組みを今後も続けていきます。

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インタビューとコラムのライティング:馬場吉成

工業製造業系ライター。機械設計の業務を長く経験。元メカエンジニアで製造の現場を直接知るライターとして製造業向け記事、テクノロジー関係の記事を多数執筆。http://by-w.info/