「ローコード、ノーコード開発ツールを使ってDX」オリジナル勤怠管理システムと社内アプリの開発。

近年、企業の業務効率化やデジタル技術の活用を目的とした「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が注目されています。私たちシバサキ製作所でも、社内アプリの開発が進められており、勤怠管理やお弁当の注文など、身近な業務からDXが着実に浸透しつつあります。今回は、社内DXを推進する山田さん・小林さんの2名に、「ファイルメーカー」を活用したアプリ開発の取り組みとその裏側について話を聞きました。

DX会議のはじまりとファイルメーカーとの出会い

社内DXを担う「DX会議」は、ファイルメーカーを用いてアプリ開発に取り組んでいた3名のメンバーに、ネットワーク構築に詳しい課長と社長が加わって結成された、5名の小規模チームです。はじまりは「パソコンに特別詳しいわけではなかった」という山田さんと小林さんでしたが、「できることから始めよう」と手探りでファイルメーカーの学習を開始しました。

画像:DX会議この日は製造部のメンバーと協業し社内データの表現と共有方法について話し合う。

ファイルメーカーとは、クラリス社が提供するローコード/ノーコードの開発ソフト。社内業務に合わせたカスタムアプリを手軽に開発できるのが特長です。市販のパッケージソフトでは対応しきれない細かな要望にも応えられる自由度の高さが、社内開発を選んだ理由のひとつでした。

最初は、「名刺管理アプリ」や「物品購入申請のデータベース」や「1分単位で申請できる残業申請フォーム」など、小さな業務改善からスタートしました。これらを通じて「自分たちでもアプリが作れる」という手応えを感じたことが、より大きなアプリ開発への第一歩となりました。

画像:現在10前後のファイルメーカーによるアプリを作成、運用中です。

勤怠管理アプリの開発──外部パートナーとの協業

DX会議が次に取り組んだのが、勤怠管理アプリの開発です。従来使用していた打刻型の勤怠システムだと、勤務パターンの新設などのシステム追加費用や、OSや通信環境の変化に対する適応費用がその都度コストが発生することから、内製化による対応が検討されました。

ただし、勤怠管理には、勤務時間に応じた給与手当の設定、休み時間帯の設定、給与計算システムへのデータ出力など、複雑な就業ルールが絡んでおり、自社だけでの開発は困難でした。そこで、外部パートナーである株式会社ジェネコムの協力を仰ぎ、「システム面はジェネコムが開発、業務内容や計算ルールの要件はシバサキ製作所が提示する」という協業体制が取られました。

株式会社 ジェネコム|FileMaker 開発における最上位の Claris Platinum レベルパートナー。FileMaker開発、コンサルティング、ハンズオントレーニング、ボリュームライセンス販売等を行う。https://www.genecom.co.jp/

「ジェネコムさんに開発をしていただくことにより、QRコードの読み込み機能や、マスターデータベースの使い方など、今後の社内アプリ開発に役立つ知識を得ることができました。」

「総務部が使いやすいように操作性を変えすぎないよう配慮しました。給与計算に必要な勤怠データをCSV形式で出力できるようにするなど、実用性を重視して要望を出しました」(山田さん)

開発には約1年を要しましたが、完成したシステムは「紙の記入や手入力が不要になり、大きく業務負担が軽減された」と、総務部からも好評を得ています。

画像:勤怠管理システムは市販のタブレットを活用、打刻は個人の携帯電話でも可能とした。

経験を活かし、自社開発で「お弁当注文アプリ」を制作

勤怠管理アプリの開発経験を経て、次に社内メンバーのみで着手したのが「お弁当注文アプリ」でした。従来は、お弁当の種類を事前に総務に伝えておいて、不要な日は紙による申請を行っており、選べるお弁当も少なかったです。さらに総務部門で毎日手集計を行い、電話で業者に発注する必要がありました。

これを改善するため、タブレット端末から社員さん一人ひとりが、QRコードをかざして、好きなお弁当を直接注文できるアプリをファイルメーカーで自社開発。日付選択のカレンダー機能や注文一覧の自動集計、注文キャンセル機能などを搭載し、使い勝手にも配慮しました。

「一般社員が操作するアプリなので、工程をできるだけ少なく、直感的に使えるよう心がけました。『ここを押して、次にここ』とわかりやすくなるよう意識しました」(小林さん)

このアプリにより、総務部の業務負担は大きく削減され、遠隔地にある第3工場からのメニュー変更なども各自で対応できるようになりました。FAXによる注文連携も実現し、業務全体の流れがスムーズに整備されたのです。

最近、美味しいお弁当業者さんと提携し、メニューも更に豊富になって、このアプリを使うとその日の気分に応じて食べたいものが注文できると社員さんからも好評いただいています。

今後の展望──可視化と連携によるさらなる改善へ

現在は、工場内、各工程で発生してしまう不良品を集計し、グラフで可視化するアプリの開発が進行中です。製造部門と検査部門で別々に集計されている不良情報を一元化することで、全体の傾向を把握しやすくするのが狙いです。日々改善を行っていただいている製造部門の皆さんにすぐに、結果を見ていただければより、やりがいも感じ、改善サイクルも早くなってくれるのではないかと期待しています。

「弊社は製品の品番や工程が非常に多く、入力や集計方法も部署ごとに異なるため、そこを統一するのが大きな課題です。まだ行き詰まっているところもありますが、方向性は見えてきています」(山田さん)

このように、現場の課題を自ら見つけ、自分たちで解決策を考える取り組みこそが、シバサキ製作所における“現場主導型のDX”の強みです。

DXは「やってみる」ことから始まる

「本当にできるのかな……」という不安から始まったファイルメーカーの活用でしたが、いまでは「自分たちにできることを形にしていく」楽しさも感じているといいます。

「ジェネコムさんに関わっていただいた事で、これからも協業による新規開発の可能性が広がったこと、講習などのプログラムもあり、自分たちではまだわからない所を教えてもらえる力強いサポートがを得ることができ安心しました。」

「複雑な機能はまだ難しいですが、興味を持って取り組むことでできることが増えました。社内で開発すると、ちょっとした変更もすぐに対応できるのがメリットですね」(山田さん)

「プロのようにはいきませんが、自分たちでアプリを作るからこそ、痒いところに手が届くものができると思っています」(小林さん)

今後もジェネコムのような外部パートナーの力を借りつつ、自社の業務に即したアプリを内製し、日々の業務改善を積み重ねていく。その地道な取り組みが、DXの本質なのかもしれません。

関連リンク:

2021年の開発スタート当時のコラム「中小製造企業のDX、自社でデータベース開発し業務改善。」

株式会社 ジェネコム ホームページ

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